痛くもかゆくもない! なんて、軽い気持ちで放っておいたら、ある日突然、痛い! つらい! がやってくる。そう、生活習慣病が牙をむく瞬間です。「長期間の慢性的な血管のよどみが一瞬にして決壊。心臓や脳に、突然襲いかかりましたぁ~!」という災害緊急速報が体内をめぐります。
その計画的犯行の首謀者は、アブラ分を帯びた血液。どろ~り、どろ~り、と血管のなかを這いつくばっている俗名・悪玉コレステロールです。LDLコレステロールというのが、本名。LDLコレステロールは、酸化されることを好み、それによって動脈硬化の道をまっしぐらに突き進んでいます。
一方、その首謀者の悪事を見張る番人もいます。体内派出所に勤める女性警察官こと、エストロゲンです。エストロゲンといえば、もともと女性ホルモンとして有名。ホルモンという言葉は、ギリシャ語の「刺激する」が語源とされています。自身の女性らしさを保ったり、男性のホルモンバランスにも働きかけたりと、往き行く人にいかにも声掛け上手な女性警察官です。彼女たちには、もうひとつ重要な役割があります。それが、悪玉コレステロール軍団のふらつきの見回りです。
抗酸化作用を身にまとうエストロゲンは、体内の脂質代謝に働きかけて善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やし、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を減らします。このエストロゲンの抗酸化作用のおかげで、ふらつき連中の非行化を防いでいるのです。そして、彼らのたまり場を排除し、道の往来の正常化に努めています。
エストロゲンと同様の作用をもつ天然成分がいくつかの食べ物から見つけ出され、ホルモン様物質として知られています。その一つがザクロ。ザクロには多くのエストロゲンが含まれていて、さらにひとのエストロゲンと化学構造が同じということで注目を集めています。ザクロジュースの脂質代謝改善の作用については、いくつかの研究論文が支持しています*1) 2)。
脂質異常症(高脂血症)は、おもに不規則・不摂生な食事や運動不足などが原因となり、多くの場合、体重増加を伴い、発生します。動脈硬化を引き起こすだけでなく、心臓病や脳卒中など日常生活に大きな影響を与える病気を招くので厄介です。脂質異常症の人は、正常な人に比べて心臓病のリスクが数倍高いため、脂質レベルの低下、とくにLDLコレステロールの低下が心臓の保護と健康の維持にはとても大切となります。
血管を思いやる心がけが、将来の生活を素敵にします。いつまでも健やかにいたいと思う方には、ザクロジュースをおすすめします。
シリーズ第3回は、血管のなかで働く、ザクロの健やかなチカラでした。
注意事項
※血液検査で脂質代謝異常を指摘された方は、循環器専門医等の適切な指導を受けてください。
※薬物療法と同じ治療効果を期待するものではありません。
参考文献
1) Michael Aviram, et al, Pomegranate juice consumption for 3 years by patients with carotid artery stenosis reduces common carotid intima-media thickness, blood pressure and LDL oxidation. Clinical Nutrition 2004; 23: 423–433
2) Michael D. Sumner, et al, Effects of Pomegranate Juice Consumption on Myocardial Perfusion in Patients with Coronary Heart Disease. Am J Cardiol, 2005; 96: 810–814
関連図表
図 脂質レベルと心血管病リスクの関係
[出典 フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)より(一部改変)]
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